UXアーキテクト
玉田 沙織

UXデザインの観点から、サービスにおける「三方よし」を追求する

Oct 13, 2023

Webデザイナーとしてキャリアをスタートした後に、「UXデザインのジェネラリスト」となるべく研鑽を積むUXアーキテクトの玉田沙織。デジタルガレージにおける「頼りになるサポーター」のような伴走者として、課題の大小や関わり方を問わず、UXデザインの知見をもって分野横断的にプロジェクトに携わる。

株式会社デジタルガレージ DG Technology部 デザイン部門 UXアーキテクト
玉田 沙織

Webデザイナーとして複数のスタートアップ企業に務めた後、デジタルガレージのグループ事業会社にてWebマスターとしてサービスサイトの企画運用、UIデザイン、UXデザイン等に携わった経験を経てデジタルガレージに転籍。現在は、UXアーキテクトとして、UXデザインやUIデザインを軸に複数のプロダクトや分野に領域横断的に関わる。

ビジネスとデザインの間に、接合点をつくる

新卒では、Webデザイナーとしてスタートアップに入社。主な仕事は受託開発のサポート業務で、作成されたデザインデータを指示書にある通りにWebに実装していくことに終始しており、自分の仕事がビジネスにどのようなインパクトを与えるのか、疑問がついて回る日々を送っていました。今思えば流れ作業のようにも感じられた業務に、「このサービスはユーザーにとって使いやすいものだろうか、もっとビジネス的に他に優先すべき課題があるのではないか」という気持ちが芽生えていたのかもしれません。

その当時は、UXデザインの概念がWeb業界ではまだあまり一般的ではなく、国内で注目され始めていた時期でした。これはまさに私の関心を大きく惹くトピックでした。ユーザー起点でプロダクト全体の流れを設計していく考え方や、ユーザーインタビューを行うことを始め、さまざまなリサーチ手法を用いることで、デザイナーとしてサービスやプロダクトに対して確かな貢献ができるのではないかと手応えを感じました。これまでに私が抱いてきた疑問を解決する術になると感じたことが決め手となり、UXデザインの領域に足を踏み入れました。「UXデザインのプロフェッショナル(ジェネラリスト)になる」という人生の目標ができたのもこの頃のことです。

その後、デジタルガレージグループの事業会社に転職し、マーケティング部の一員としてUXデザインを含むWebマスターに就任。ひとつの事業を軸に既存ユーザー様にリピートいただけるよう、さまざまな改善や施策を実施し、手応えのある成果を積み重ねてきました。4年ほど同事業に携わるうちに、ひとつの事業に特化した「スペシャリスト」になりつつある自分の現在地と理想とのギャップを意識し始めたことをきっかけに環境を変えることを決意。よりサービスや事業、業界を横断しながら自らのUXデザイナーとしてのキャリアアップが叶う環境への期待を抱き、現職(DG Technology部)へとキャリアシフト制度(グループ内でスキルアップやキャリアチェンジを行うことができる制度)を活用して転籍しました。

ここは「面白くも興味深い」、ジェネラリストに昇段するための鍛錬場

転籍以前に抱いた期待通りと言うと過分かもしれませんが、入社して半年となる現時点(2023年8月)で、UXアーキテクトとして3つのジャンルレスなサービスに携わる機会に恵まれ、あの時の決断は間違っていなかったと感じています。決済サービスを軸に医療から飲食関連、一般ユーザー向けのセルフ決済関連など、自分にとって必ずしも身近ではない業界についてリサーチを重ね、サービスの設計作業は本当に面白く、仕事のためというよりも自らの好奇心に水を注ぐような感覚で日々の業務に向き合っています。

私が現在務めるUXアーキテクトは、サービス全体をユーザー視点で情報やフローを整理し、意図どおりに実装されるためにディレクションを行う仕事です。新サービスに関わるビジネスサイドの与件を整理し、構成案やフレームワークなどの形式でエンジニアやデザイナーへパスする橋渡し作業もありますし、ユーザーにとってより快適かつわかりやすく情報をお伝えできるようUI単位での改修や改善なども行う、サービスに関わる全てが管理対象です。

これまでに関わった案件のひとつに、「DGFT請求書カード払い」というBtoB向けのクレジットカードを活用した資金繰りを改善するサービスがあり、そのサービスサイトのリニューアルを担当しました。以前のサービスページは、その当時、請求者(発注者)向けと支払者(受注者)向けで、対になるふたつのサービスがまとめて紹介されていたために、社内外から「情報がわかりにくい」との声があがっていました。より親切な情報設計を目指し、サービスごとに独立したランディングページ(LP)を設計するにあたって、ヒートマップを活用してユーザーの離脱地点を可視化して原因を分析するほか、競合他社に対する競争優位性を探り、それらのリサーチで得たデータをきちんとユーザーに伝わるようテキスト化や図版化し、リリースするまでの一連の流れのディレクションを行いました。LPという一枚の画面において、ユーザーが処理できる情報のサイズになっているか?という課題感をチームで共有し、実装に努めた結果、LP改修後の申込数は上昇傾向にあり、良かったなと安堵しているところです。

ひとつのサービス開発に関わるだけではなく、担当ではないサービスに関する単発対応もあります。「どうしていいかわからない」「誰に相談して良いかわからない」といった段階から相談を受け、なにかしらの案を担当者とともに構想するといったサポートパターンもあります。その内容は、Webマーケティング領域や新規機能の提案、UIのアニメーションの作成など多岐に渡ります。ある意味では、駆け込み寺と言えるかもしれません。私自身、予想外のボールが飛んでくることに面白さを感じるタイプですし、プロダクトに対して確かに貢献しているという実感が得られることがありがたいです。

さらに言えば、最近はリリース以後のサービス改善提案もしています。新規サービスを立ち上げて以来、運用で手一杯になってしまって改善にまでなかなか手が回らない、というようなこともあります。そんなときは、私の方から「最近の調子はどうですか?」とカジュアルに現状をお聞きしながら、今できることを見て回ることもあります。総じてサービス改善に意欲的な環境ですので、意見や声がけに対して好意的に受け取ってもらえることもデジタルガレージの良いところだなと思います。

「仕事のための勉強」なんてない。「好きだから調べたくなる」だけ。

DG Technology部のチームメンバーをはじめ、デジタルガレージに所属するメンバーは新しいテクノロジーやトレンドに寛容かつ敏感です。先手を打って最先端の考えを取り入れていきたいと考える方も多いです。それに応じたスキル獲得や情報収集能力も貪欲ですね。また、それらのスタンスを支える環境やムードがここにはあります。AIをはじめ新規性のある事業への関わりを求める方にはもってこいの職場ですし、好奇心が強く、広範囲にアンテナを向けて周囲に強いられることもなく自発的に調べたり学びを深めたりする気質の方にとっても、心地よく感じられる環境ではないでしょうか。

個人的に今、高い関心をもっているのはChatGPTを活用したUXリサーチの可能性です。たとえば、従来のユーザーリサーチは人対人のアナログなインタビューを設計するほかありませんでしたが、ChatGPTに特定のフォーマットを入力すると仮のペルソナを出力できます。精度を高めたものが出力できるようになれば、いずれ仮説検証の最初のプロセスに活かせるかもしれません。

昨今、画像生成AIの生成物にもまた注目が集まっていますが、クリエイティブのコンセプト設計では新たな活用ができそうな一方で、サービスデザインの領域では画面設計やUIデザイン分野には正直なところ、私自身はまだどのように業務で活用できるかイメージができておりません(2023年8月現在)近い将来、画面内の情報設計についてはChatGPT等の大規模言語モデルで出力し、画面内の繊細なUIデザイン表現については、画像生成できるようになると嬉しいなと思っています。最近は、興味半分でいろいろと試行錯誤した結果、ChatGPTで新しいサービスの考案・画面設計図までを作成する方法を編み出したり、その結果をデザインツールのFigmaに読み込むと、簡単なワイヤーフレーム(構成案)を出力することができるプラグインを開発するなど、趣味感覚で遊んでみているというところです。

個人的には頭のなかでごちゃごちゃと考えている新規サービス構想にも丁度よく感じます。例えば、ダイエットのためのレシピをパーソナライズして考案してくれるサービスなど、「こんなサービスがあったら便利だな」という妄想をChatGPTに放り込むと、思いのほか良い仕上がりのアウトプットに当たることがありますので、「じゃあプロトタイプを作ってみようかな」ということもあります。

仕事のために勉強をしているという感覚はなく、「ただ面白いからやっている」というそれだけのことです。良いアウトプットが出力されれば、自分でデザインをさらに作り込んでみたり、知り合いのエンジニアさんに聞いてさらに実装を目指してみたり。これはもうただの趣味と気質という他ないのかもしれません。

総括すると、飽きやすく好奇心旺盛な性分だからこそ常に新しい課題に出会える環境に身を置きたいという気持ちをベースにキャリアを積み重ねてきました。当初掲げた人生の目標は、デジタルガレージに入社したことで「叶った」と感じる側面がある一方で、UXデザインという途方もない大海の深さを知ったことで新たな課題が出現したようにも感じます。けれども、未知の課題があると「解いてみたい!」と心が躍りますし、いくつも課題を解いた先で生まれたプロダクトがユーザーの方々に喜んで受け入れられると、どこか満たされる気持ちが生まれます。

技術に興味や関心を抱いていらっしゃる方にとっては、今までのお話した内容に共感いただけることがあるかもしれません。琴線に触れる要素があった方は、ぜひメンバーや会社の雰囲気などの様子を見にきていただければと思います。

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