クリエイティブテクノロジスト
石川莉晏

日常に溶け込む「技術の届け方」をデザインし、社会課題を解決する

Jun 15, 2023

技術者として活躍するだけでなく、技術をどのように人に届けるかを設計するスペシャリストとして「クリエイティブテクノロジスト」を名乗る石川 莉晏。社内の3つの部署を兼務しながらあらゆる技術やビジネスアイデアを掛け合わせ、人々の生活の中の課題を解決できるような技術の活用方法を常に模索している。

株式会社デジタルガレージ オープンネットワークラボ推進部ESG担当 兼 DG Lab 兼 web3事業開発部 クリエイティブテクノロジスト
石川 莉晏

2020年に新卒でデジタルガレージに入社。研究開発組織の「DG Lab」に配属後、技術開発だけでなく技術をどう人々の生活に寄り添う形で届けるかを設計する「クリエイティブテクノロジスト」を名乗る。web3事業開発部やオープンネットワークラボ推進部も兼務し、ESG(環境・社会・ガバナンスへの配慮)スタートアップの調査研究や投資先のバリューアップ支援も行う。

テクノロジーをバリアフリー化し、多くの人に届けるために

元々ニューヨークのパーソンズ美術大学で「デザインとテクノロジー」を専攻していて、卒業制作では人の多様性をどうテクノロジーで表現するかを研究していました。アーティストになるか企業に就職するか悩み、色々な人と話していたところ、デジタルガレージには新しい技術をどう社会実装していくかを考えている人が多い印象を持ちました。そこに強く興味を持ち、DG LabのxRチームで一ヶ月間、週5日でインターンをさせてもらいました。

xRチームでは「テクノロジーをバリアフリー化する」ことを目標に新しいサービスを開発していました。例えばVRという技術は、お子様だとヘッドセットのサイズが合わなかったり、お年寄りの方は使い方がわからなかったりして体験できないことがあります。年齢や性別などの違いを超えて、どうしたら最新の技術を多くの人の日常生活に溶け込むように届けることができるか。そこに重きを置くチームの考え方に共感し、私もテクノロジーの格差をなくせるようなデザインができたらいいなという思いでデジタルガレージに入社しました。

最初はDG Labに配属されましたが、大学時代の研究領域の一つでもある「多様性」に関心があったので、2010年よりシードアクセラレータープログラムを運営するオープンネットワークラボ推進部のESG関連の業務も少しずつ兼任するようになりました。2023年現在はDG Lab、web3事業開発部、オープンネットワークラボ推進部の業務を兼務しています。

新しい技術を組み合わせ、コミュニケーションを生み出す

DG Labでは「クリエイティブテクノロジスト」を名乗っているのですが、これは実は元々社内では前例にない肩書きで、入社一年目のときに上司と一緒に付けました。一言でいうと「技術者とデザイナーの架け橋になる人」という意味です。技術をどのようにして、人に体験として届けるか?という点に特化した専門家のことで、技術開発力や知識だけでなく、技術の「届け方」を考える人が社内にも、日本全体でも増えたらいいよね、という意味合いを込めています。

印象深いプロジェクトは、DG Labが開発した高周波音を利用した位置情報測位システム「SonicBeacon(ソニックビーコン)」の実証実験です。スピーカーから出る音をスマートフォンで拾うことで建物内での位置情報が表示できるシステムで、この技術をどんな場面で活かせるかを検討するところから参加しました。実証実験の舞台となったのが、新潟県の自然科学館です。科学館には、子供に見てほしい展示と実際に人気の展示が違うことや、来場者との会話が生まれにくいことなどの課題がありました。そこでSonicBeaconを用いて、施設内の複数のスポットに近づくとスマホにクイズが配信されるような体験型のイベントを考案し、普段注目を浴びないような展示に誘導できるようにしました。

スマホからQRコードで簡単にアクセスできるようにしたり、子供も大人も使いやすい画面推移を考えたりと、フロントサイドの開発からデザインに至るまでプロジェクトに関わりました。結果として、今まであまり注目されていなかった展示を時間をかけて見てもらえるようになったり、子供から質問されることが増えたりしたとのうれしい反応がありました。シンプルなシステムがうまく機能し、科学館に来場する幅広い年代のコミュニケーションを生むことができたと実感したプロジェクトです。

他にも、バスの窓にARディスプレイを搭載し、車窓からの風景に仮想コンテンツの映像を重ね合わせる「xR BUS」プロジェクトに携わりました。スマートフォンのような個人デバイスが多い時代ですが、みんなが同時に体験することで会話が生まれ、分断されたコミュニティをつなげられるような技術の活用法を目指して始まった企画です。例えば同じ街でも、一般市民と、行政の方やディベロッパーの方が見ている景色は違うはずです。ARの映像を車窓に導入し、時間軸を超えて昔の風景や将来の風景を重ね合わせることで、普段は話さない人同士でも自然とコミュニケーションが生まれるようなしくみを考えました。

現在兼務しているオープンネットワークラボ推進部では主にESGの調査研究や投資先へのESGバリューアップ支援を、web3事業開発部ではクライアントである事業会社に対してNFTの企画・提案などを行っています。部署を超えて兼務することで社内で関わる人の幅が増え、自分の世界観やできることがとても広がったと感じています。例えばweb3と、xR領域であるメタバースや位置情報などの技術を組み合わせてプロジェクトを提案することもありますし、ESGの視点から、新しい技術を使ってどのような社会的な課題に踏み込めるかの議論に参加することもあります。マルチタスクではありますが、全部がうまくつながっている気がしています。

社会にどんなインパクトを与えたいのか、考え続ける技術者に

デジタルガレージは「人がおもしろい会社」だとずっと思っています。技術者はAIやセキュリティーなど研究分野が多様で、大企業で専門的なエンジニアをしてきた人もいれば、スタートアップで全般的に経験を積んだ人も、アーティストに近い人もいる。そんな皆さんから研究の話を聞くのがすごく好きで、日常会話からプロジェクトが始まることも多いんです。専門外でも「自分だったら技術をこういう風に使いたい」と無邪気に言える環境があるし、皆さんそれを否定せず「もっとこうしたらおもしろいよね」というボールが絶対返ってくる。それが、毎日楽しく過ごせている一番の理由ですね。

自分の専門外の技術を学べる機会も多いです。DG Labでも月に1〜2度「Show and Tell」という勉強会で社員が技術的なトピックについて発表していて、技術者だけでなく営業職などのビジネスサイドの方が参加することもあります。同じフロアに事業開発チームやクリエイティブチーム、投資部門や広報など多様な部署があるので自分の担当以外の情報も入りやすく、会社視点や事業部視点など広い目線が持てるのがいい環境だなと思います。

私自身としては今後も一つの技術に固執せず、偏りなく色々な技術をつなぎ合わせて新しいものを作っていきたいです。そして技術ファーストではなく、ユーザーファーストになるような技術をきちんと浸透させていきたい。 その技術でデジタルガレージとしてどんなインパクトを社会に生み出せるかを常に考えた上で、ユーザーの体験を作る。そんな人でいられたらいいなと考えています。

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